「ごめん。ナオミのことそういう風に見れないわ」

クリスマスの夜――。街はイルミネーションでキラキラと華やかに輝き、日本中が色めき立つ。幸せな人々はその幸せを十二分にかみしめることができる反面、幸せではない人々は孤独や嫉妬に苛まれる残酷な日。

そんな夜にあたしは告白した。相手は大学の先輩。そんなにイケメンではないけどスラッと背が高くて、素朴で温和な人。大学のサークルで知り合ってからの長い付き合い。はじめは異性として見れなかったんだけど、時間が経つにつれその優しさに少しずつ惹かれていき、気がつけばとても大事な人になっていた。最近ではその想いが特に強くなり、その人のことを考えると夜が眠れなくなったり、ご飯が喉を通らなくなったり、ちょっとしたことで一喜一憂したり……。まさに恋患い。

さらにあたしは焦っていた。先輩は来年の春に大学を卒業し、就職して遠くに行ってしまうのだ。恋患いと焦りであたしは溢れる想いが止められなくなってしまっていた。

無理を言ってクリスマスの1ヶ月以上前から先輩のスケジュールを確保して、1週間前には先輩が欲しがっていたボディバッグをプレゼントで買って、前日には美容院に行った。

当日は気合い入れて化粧してとびっきりのお洒落をして待ち合わせ。評判のパスタ屋さんでご飯を食べて、イルミネーションが輝く大きな公園を二人で歩いた。そこであたしは先輩にプレゼントを渡し、この人生の中で一番緊張して手や脚が震え、おしっこちびりそうになりながら告白した。

でも……。

今日のためにこんなに頑張ったのに……。あなたのことが世界で一番好きなのに……。

あまりのショックに頭を鈍器で殴られたような感覚が襲い、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなり、その直後のことはよく覚えていない。

 

――あたしフラれちゃった。

 

気がつくとあたしは一人で公園の中をフラフラと歩いていた。

失恋して茫然自失するナオミ

思考が徐々に戻ってきたあたしは様々な想いが頭の中を駆け巡る。先輩との楽しかった思い出。LINEで朝まで語り明かした夜。サークルのみんなで行った海水浴。騒ぎすぎて怒られちゃったバーベキュー。頑張って準備した学園祭。

だけど、心に決めた人と心が通じ合っていなかった。あなたの輝かしい未来にあたしは必要じゃなかった。そして、明日からは友達ですらなくなる。

急に自分が惨めに感じ、鼻の奥がツーンとして、両目の涙腺から涙が止めどなく流れ落ちる。悲しみが身体中を覆い尽くし、力が抜けて手に持っていたバッグを地面に落としてしまった。股間の括約筋も力を失ってしまい、温かい感覚が股間に広がる。その感覚はやがて内股やお尻の方へ流れ、地面に向かって落ちていく。流れ落ちたそれはブーツの入り口でブーツの外側を伝って滴り落ち地面を濡らすものと、ブーツの中に溜まっていくものに分岐する。

ナオミのブーツおもらし

あたしは悲ションをしてしまった。

すれ違うカップルがギョッとしてあたしを見ている。惨めなあたしにはお似合いの姿……。やっぱり先輩もこのおもらし癖がダメだったのかな……。でも、もうどうでもいいや……。サークルにはもう顔を出せないし、もう先輩にも会うことも無いだろう。

冷たい風でおもらししたおしっこが冷え、体温を奪っていく。

 

――先輩

 

今までありがとう。

楽しかったよ。

幸せになってね。

 

さようなら